旅するチェリスト水谷川(みやがわ)優子のブログ

2007-07-25 Wed 00:27
クフモ・『冬の旅』そして河合隼雄先生のこと、その3

面白いもので、実はその夏に全く違うルートで御縁を下さった方があります。それは科学者そしてチェリストでもある村上陽一郎先生で、その秋にフルート奏者の佐々木真さんが主催なさるコンサートで河合先生のフルートと共演しませんか、というお話でした。亡くなった伯父の最後の作品が河合先生と佐々木さんの嘱託されたものであったというのが推薦された理由なのだと思いますが、伯父と先生方の交流については奈良で河合先生に伺うまで私は全く知る由もなく、しかも、その作品を数年後に鹿児島でフランス放送響の首席フルート奏者トーマ・プレヴォー氏と河合先生と、そして私で演奏する事になるとは、その時は思ってもいませんでした。
いずれにしても、こうして河合先生とは音楽を通し、付かず離れずの御縁を紡がせて戴く事となりました。不思議な事に一つのコンサートが終わり、御縁にピリオドが打たれて、少し経つと当たり前のように、次に席を御一緒する機会やコンサートの話が舞い込んでくるのです。
コンサートに向けては、厳しく楽しいリハーサルをした後に、毎回のように皆でご飯やお酒を戴きながらお話をするのが楽しく、笑い過ぎでお腹が痛くなった事もあったくらい。時に泊まり込みの合宿状態で練習をする事もありましたが、先生はいつも心から寛いでいらっしゃるように見えました。
 リハーサルやコンサートの後は先生お得意のノンストップ駄洒落も(最初のうちは一々驚いていた私もだんだんと慣れ、たまには切り返すことも。。。)絶好調でご機嫌でしたが、たまに目の前にいらっしゃる方が一体誰なのか、ふとわからなくなる瞬間もありました。
それは幾度か『フルート吹いてる時は全て忘れてる』と仰ったとき。そういう時はお目がきゅっと小さくなられ、お顔の印象も変わるのです。それで日頃、先生の背中にのしかかっている重圧がこちら側に移ってくるように感じ、改めて先生の日本で置かれてらっしゃるお立場について考えた次第。お仕事の話なぞ絶対にしないし、フルートを吹かれる河合先生は私にとって非常にシンプルな存在だったからです。
ー学生時代に夢中になって吹いていたフルートをある時期から頓挫され、60歳を超えてからもう一度吹き始められたーそんな河合先生のフルートは一言でいったら<味のある笛>でした。『下手な横笛』というのをスローガンにしていらした先生ですが、その笛の伝える世界はなにやら懐かしい<お伽噺>や<昔話>の世界でした。これは何度か共演しているフィンランド人のマークがコンサート直後に言っていたことでもあります。
<お伽噺>の世界。。。もし誰かが言葉でない何かを(手段を超えて)伝える事が出来たなら、それが音楽の存在意義ではないでしょうか?
もはや上手とか下手では語れない、河合先生はそんなところで吹いていらっしゃいました。20070725001241.jpg

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2007-07-24 Tue 01:43
クフモ・『冬の旅』そして河合隼雄先生のこと、その2
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河合先生とは面白い御縁を戴いていました。
何年前になるでしょうか、最初にお目にかかったのはフィンランドから関西空港経由で奈良の講習会のコンサート会場に直行し、あまりの熱さと時差で蝉の鳴き声が頭に響いて意識朦朧となっていた時の事です。
『あなたの伯父さんの遺作はね、僕のために書いてくれはった、いやあオモロい曲ですわ!!』が先生の初めの一言で、それを目をまん丸くして仰ったのが印象的でした。(伯父はその数ヶ月前に亡くなっていたのです)それから暫く<当たり障りの無い世間話>をしていましたが、どんな話の流れだか、ふと、その夏に私が無性に読み返したくなり欧州に持っていったのが芥川龍之介(羅生門、鼻、芋粥と地獄変が)であった事に触れると、先生はその途端に『ほうほう、それでそれで?』と身を乗り出され、それから時も忘れてお互いに<本>のお話をしました。それで私はなんとなく先生と心が通じた様に(勝手に)感じ、それ以来、先生の前では安心して素の自分のまま、勝手な意見を述べる様になったのでした。
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2007-07-20 Fri 23:56
クフモ・『冬の旅』そして河合隼雄先生のこと、その1
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 いま、フィンランドの北の町<クフモ>にいます。例のゴトーニ父子とのコンサートの翌日に飛んで来ました。ここはこの国で一番大きな音楽祭があることで有名な町。私は去年に続いてマークに付いて来ました。10日間弱、私の<束の間の休暇>!です。
 夏のクフモでは朝の11時から真夜中まで、一日中町のあちこちでコンサートが行われます。私は日本でコンサートを聴きに行く機会がどんどん減っているので、最近は音楽漬けになってビタミン補給する唯一の場所。それと同時に秋からのコンサート・プログラムの準備や、レパートリー拡張のための貴重な期間でもある訳です。(先日ヘルシンキの図書館でフィンランド作曲家の作品をごっそりと借りてきました)
 ここには世界中から音楽家が集まってくる訳で、色んなマエストロに再会。久々に今井信子先生にもお目にかかりました。なんと先生はこちらで初めて演奏なさるそうで、演奏家とその家族、マスターコースに参加する生徒やスタッフとがごちゃまぜになって食事をする食堂(給食です)で『なんか学生時代を思い出すわ』と笑っていらっしゃいました。そうそう、ここでの移動手段は基本的に自転車。皆さん楽器を背負って乗りこなしています。チェリスト達も果敢にチェロをおぶって。。。去年はストラド抱えて転んだフランスのビオラ奏者もいて、大事には至りませんでしたが、結構危ない。(勿論、私は愛チェロ君とは自転車に乗りません…自信なし)でも借りているアパートメントと各種コンサート会場の間を湖に沿って自転車を飛ばすのは本当に気持ちがよいものです。
 そうそう、それからもう一つ。ここでじっくりと本を読む事も私の目的のうちの一つでした。一つの旅には期間によって長編一冊とエッセイ一冊、または中くらいの長さの小説を1、2冊とエッセイを2、3冊くらい持って行きます。最近フィンランドでは村上春樹さんの作品を読み返すことが多く、今回も長編『ねじまき鳥クロニクル』と対談本『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』を連れてきました。

 河合隼雄先生…実は私の二枚目のCD「ソルヴェイグの祈り」のライナーノートには河合先生のコメントを戴いています。

そして友人から緊急メールを貰ったのは昨日の事でした。<河合先生がお亡くなりになった>事を急いで知らせるために仕事場から送ってくれたメール。
「まさか」と「やはり」の狭間の中でどうしていいか、わからず、心に収まりきらない思いが体中を駆け巡りました。
去年の夏に先生が倒れられてから、この一年間心の中に持っていた思いが有ります。それを整理したかった事もあって村上さんとの対談の御本をフィンランドまで持って来たのに。。。
 
 この場を拝借して心に収まりきらなかった事を少し綴っていこうと思います。
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2007-07-16 Mon 23:00
サヴォンリンナからヘルシンキ
15日の日曜日は↓の親子マエストロとヘルシンキにて共演。海の近くでホテルや会議施設も隣接している300人くらいの明るく綺麗な会場でした。コンサートは先ず父・ゴトーニと勢いよくドビュッシーのチェロソナタで幕開け、その後は父&息子ゴトーニのファリャの「七つのスペイン民謡」、後半がドヴォルジャークの「ドゥムキー三重奏」でした。
それにしても、この日の聴衆の皆さんは大変に暖かかった。ドリオを弾き終わった時はホール全員がスタンディング・オベーション!!何度カーテンコールしても拍手が鳴り止まず、主催者の方が舞台にあがって我々にプレゼントを下さり、終わりの御挨拶が済んでもまだずっと盛り上がったままでした。
そして終わってからの舞台裏は若い学生さんからご年配の方までの見知らぬ観客の方で一杯に…人見知りの筈のフィンランド人が、手を取って私にフィンランド語で(私はフィンランド語は??です。。。)激賞して下さいました。
マエストロ・ゴトーニはフィンランドでは道行く人が振り向くほどの超有名人…でも流石のマエストロもこのお客様の反応には驚いていました。
帰りの車の中では親子ゴトーニと3人でしみじみ音楽を続ける意義(時にどんなに困難があろうと…そう、マエストロだって日々戦っているのです。音楽においても、また現代社会の中のクラシック音楽のポジションにおいても。)について語り合い、また続けられる幸運に感謝した次第です。
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『やっぱりキノコパワーだよね』
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フィンランドには松茸種も生えるらしい。。。いつか試してみたいものです。
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『え?僕たちもキノコパワー?!』←ハルトムート・ヘル&愛息子のボアス君。(ピアニスト。白井光子さんの長年のデュオのパートナー。リード世界の中心人物でサヴォンリンナでは同じ島に住む<お隣さん>)
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2007-07-12 Thu 20:53
日記進行・晴れのサヴォンリンナ
日記更新中!<日記>のタイトルを体現しております。
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夏のオペラ音楽祭で有名な<サヴォンリンナ>には世界中からオペラ好きが集まって来ます。マエストロ・R・ゴトーニ(先日のーきのこ写真ー参照)が音楽監督だった時には、なんと天皇皇后両陛下もいらしたことがあるくらい。
というわけでストリート・アーティスト(大道芸人)のレヴェルも高い!毎年のように冬になるとザルツブルグのメインストリート(昔の原宿竹下通り)に出没し、悲しくバロックフルートを吹いていたおじさんなどは出る幕がありません。(夏のザルツは観光客のメッカで、大道芸人の競争が激しいのでおじさんは来ない)
去年の日記にバンドネオン弾きの兄弟(中学生くらい)を写真入りで御紹介しましたが、今年はなんと小学生の天才的なバンドネオン弾きの姉弟が市場で演奏しているのを発見!そう演奏。本当に素晴らしかった。特に弟くん(10歳)が技術のみならず音楽的でほれぼれ。。。タンゴなんて目を瞑って聴いていたら、とても子供とは思えぬ<間合い>。さすがフィンランド人!(注;話はそれますがフィンランドにおいてタンゴは伝統的に国民に愛されている存在なのです。フィンランド・タンゴという分野が有って、毎年ミス・タンゴやミスター・タンゴのコンテストもあります。<ミス・桜>の様なもの、いや、ミスユニバース…?タンゴは1930年代に大流行してから今はちょっと演歌みたいな存在らしい。それにしてもタンゴのリズムとそれらしい哀愁のこもったメロディーをフィンランド語で歌われるのは私にとって非常に不思議な感覚。。。)
大人気だったチビちゃん達ですが、なかにやけに熱心に写真を撮っているオバサマが…どうやら子供達の母上みたい。親○鹿だったら微笑ましいし、教育ママだったら怖い。人々に混じって奏者の前に置いてある帽子に小銭を入れていたら、最前列でアイスを食べながら聴いていたマエストロ・ゴトーニに呼び止められ、一曲一緒に拝聴。それからマエストロもご褒美の小銭を帽子に入れようとしたら、そこは有名人のマエストロ、すかさず子供達の母上に呼び止められて一緒に記念写真をパチリ!うーん、親○鹿か教育ママか、どちらかなあ?
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リハーサルが終わって市場に戻ったらもう子供達は消え、代わりに橋のたもとで↑のおじさんマリンバ組が派手に演奏していました。公共の場所で大道芸を披露するにはちゃんと警察からの許可が必要なのです。この人たちはロシア人かな??バッハのトッカータからカルメン、トルコ行進曲まで。三人なのでなかなか迫力がありました。面白いのは夏のこの町は我々のアカデミー関係者からオペラ関係者(オーケストラはヘルシンキ・フィルや放送響の人たち)、この近くに夏の家を持っている音楽家たち…と音楽関係者だらけ。上の写真で橋を渡りながら聴いている大きな男性も絶対に音楽家。知らない人でしたが、橋のこっち側で一緒に聴きながら同じ所で「くすっ」や「ほおお」を共有しました。
で、演奏家が通りがかって聴いていると弾いている人も直ぐにわかるのですね。特にはりきって演奏してくれるので、演奏が素晴らしかったら、こちらも大きな拍手で迎えたり<オヒネリ>を帽子に入れたりする。でも最後まで無言の勝負、ムサシとコジロウの世界なのです。『おぬし、なかなかやるな』と。
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さあ、昨日はコース前半の最終日のコンサート、大好きなドヴォルジャークの五重奏で締めくくりでした。先週からほぼ連日、音楽学校に通ってレッスンと練習だったし、リアル学生の子達と過ごしていたので今の私の気分は学生。鏡の前で奏法を工夫したり…チェロ弾くのが楽しくて楽しくて、という日々です。
さて日曜はヘルシンキでコンサート。マエストロ・R・ゴトーニ(ピアノ)とマーク(バイオリン)との親子との初共演。ソナタ、ピアノ三重奏とも近年全然弾いていないプログラムなので、早速今日から毎日リハーサルです。

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2007-07-10 Tue 19:43
サヴォンリンナの茸たち
今年のサヴォンリンナは連日とっても不思議な天気です。太陽のもと雨が降る<狐の嫁入り>が毎日続いていますし、カラッと晴れていたかと思うと土砂降りのスコールが五分間だけやってきたり…IMG_1076.jpg
基本的に乾燥しているので、雨が降ってもからりとしています。だから湖の側に住んでいてもチェロ君は機嫌良し。昨日はサヴォンリンナの町で<メラルティン・ホール>(メラルティンは先日弾いたフィンランドの作曲家の名前です)コンサートでした。サヴォンリンナ・ミュージック・アカデミーという講習会の一環で室内楽コースは講師と生徒達が一緒に弾くのです。一昨日の一夜目はシャンソン・コースのコンサート。私の好きなクルト・ワイルやG・クライスラ(フリッツじゃなくてゲオルグの方ね)をたっぷり聴きました。ー昨日、今日、明日の三日間は室内楽コース、来週はまたオペラコースやリードコース、そして次の室内楽コースのグループが演奏します。ゲストの私が弾くのは昨日のシューベルト弦楽三重奏と明日のドヴォルジャーク弦楽五重奏だけ。今日はレッスンもないので午前中フリーで珍しく朝寝坊してゆっくり寛いでいます。ふう。IMG_1121kivivi.jpg


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そしてキノコ!ここの森ではベニタケ科の茸がよく見られます。散歩していて普通に生えているの。雨が降った翌日は大量発生!しかし素人の私には毒キノコの見分け方がわからないのであります。。。家には茸の本や図鑑が何冊も置いてあります。
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↓きのこ学者?いえ、指揮者でピアニスト、作曲家のマエストロ・ラルフ・ゴトーニ!!(来年は金沢アンサンブルの弾き振りで来日だそうです。)
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『ほーら、美味しそうでしょ!茸ならまかせて』
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2007-07-06 Fri 04:28
お馴染み白夜
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毎度お馴染み、毎夏やってくるサヴォンリンナの島です。
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で、今はご想像の通り夜中です。白夜…真夜中なのに明るい。明るいけれど、動物達はひっそりと静かに気配を消している。昼と夜が逆転したかの様な、鏡の向こう側に行ってしまった様な気持ちになります。
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湖も静まり返って、魚が跳ねる音が向こう岸から伝わってくる…本当に不思議な感覚です。
今週は毎日、来週のコンサートでドヴォルジャークとシューベルトのリハーサルです。夜はサウナ、そしてこの湖に飛び込んで泳ぎます。
そうそう昨夜はカイロ(カイロ・オペラハウス)から弦楽四重奏団のお客様があってサウナパーティーでおもてなし。人前で肌を見せない彼ら(フィンランドのサウナは勿論、男女別です!でも日本みたいに家族サウナは有り)は目を白黒していました。西洋音楽をプロフェッションに選んだ彼らはオープンで明るく英語も上手、だから普通に話していると忘れてしまうけれど、エジプトは戒律が厳しい国。当然、お酒も飲まないし、お肉は駄目。水着ではなくてシャツで泳いでいました。日本人の私とエジプト人の彼らがフィンランドで出会う。。。宗教が違っても国籍が違っても、音楽を通して仲間になれるのが有難いなあ、と改めてしみじみした日。
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2007-07-01 Sun 23:00
rautalampiでのコンサート
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これがコンサート会場の教会でした。大きな木の教会は我々弦楽器奏者にとって嬉しい良い響き、最高のホールです。
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で、入り口にいきなり大きなポスターが張ってあってびっくり!見た事ある顔が。。。
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ここrautalampiという町は住んでいるところ(この二週間の間)から車で飛ばして3時間以上。。。13時からのコンサートだったので鬼のように早起き、到着した途端にリハーサル。
今日の一曲目はヘンデルーハルヴォルセンの「パッサカリア」だったので固まった体をストレッチしている図。20070702235802.jpg
↑「眠いよー!!」
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弦楽トリオの図。左がマーク、右がテームです。途中、フィンランドの作曲家メラルティンについてインタヴューもあったのですが、詳しくはまた今度!!
取り急ぎ御報告致します。
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| 水谷川優子のチェロ弾き旅烏日記 |