菩薩と王子
かくて時差と原稿書きで夜は更け…
公明正大な堂々たる寝不足が続いております。
体の内側がなんとか不自然なリズムを治そうと動いてるのを感じる毎日で
胃の近辺に誰か住んでいるみたいな感覚…
でも、昨日はそんなのも一気に吹き飛ぶ体験をさせて戴きました!
1つめは午前中に伺った歌舞伎座での紫派藤間流舞踊会で友人Sの藤間 紫希波(ふじま しきなみ)としての踊りを拝見したこと。
演目は「時雨西行」
世を果無んで出家した西行が雨宿りの宿を乞うた遊女…実は普賢菩薩の借りのお姿だった、というお話しです。
幕が開け、一人旅の西行に気を取られているうちに、ハッと気がつくと気配なく、そこに立っている遊女がありました。
その姿のなんと美しいこと
儚い立ち姿に、既に訳も分からず涙がこぼれ落ち、<物の哀れ>を思いました。
嵶やかで優雅な佇まいに思わずため息が漏れます。
そして遊女としての艶やかさに見惚れ
菩薩の姿に平伏し
同じ世界のものとは思えない美しさは、静かに心の奥底まで入って来ました。
個人的な心の情景としては、去年の夏にフィンランドでシューベルトの歌曲「冬の歌」を聴いたとき感じたものに似ているかもしれません。
語弊があると困りますが、歌舞伎座から世俗が拭い去られた一時は、まるで時雨に浄化された心のように感じました。
紫希波さま、心から感謝を! これからも楽しみにさせて戴いています。(写真がボケて悲しい。。。)
そして2つめの寝不足も吹っ飛ぶ体験はもちろん、ご存知「笛吹き王子体験」
これで完全活性しました。
歌舞伎座から走ったのは、お知らせしたNHKの日本賞授賞式のリハーサル、サウンドだけでなく、カメラチェックもあって、なんとなく落ち着かず。。。
一噌さんも私も楽屋で練習しまくる。で、時々、扉を隔てて掛け合いしたり…外にいた人はさぞおかしかったと思います。
そうそう、今日は皇太子様だけのお出ましだったはずが、なんと妃殿下雅子さまも御臨席に!(白いスーツでお元気そうなお姿、本当に嬉しく思いました。 )
そして肝心の本番…出番を待っている裏での数分感、会場に満ちる熱気が伝わってきます。
先ずは王子の獅子:気合いが入って、千尋の谷に牡丹が舞い落ちる様が見えた気がしました。
そこから一瞬の即興へ…私も<和>の世界に突入、自分が弾いているのがチェロなのか、チェロが自分なのか…
そして、そのままバッハ・リコーダーソナタ BWV 1034へ移行。
出だしから嘗てないスピード感!
でもテンポではなく、導入部の気迫が繋がったもの。だから早いとは感じない。
相手の音と自分が融合したり、離れたり、主張したり、同調したり…例によって楽しかった!!
舞台を下がると裏で聴いてらした皆さんから『リハより1、5倍くらい早かったですね。でも、良かったです!』とか『和と洋、能管とチェロが丁々発止と受け合って面白かった』というご感想を戴きました。
で、楽屋に戻ると王子、早速にこちらの楽屋を覗き…
王子『で…どうでしたか?』
私 「はい?」
王子『本番…どうだったでしょうねえ』
私 「…バッハ、怖いですね」
王子 『も~の凄~く、怖いですねえ!』
そして、私が余す事無く私見を述べると
王子『ほほーう、そうですか、そうですか。いや、面白いですねえ』ですって。
まったく…王子って…
「クスクス」から爆笑まで、ずっと笑っている私です。ウチのマネージャーK氏も早速<王子>のトリコとなった様子。
またもや来年の3月が楽しみになりました!!!(3月1日の午後は東京の真ん中の某所で公演です。もう少ししたら詳細アップ致しますのでカレンダーに○をして暫しお待ちを!)
左が今回の仕掛け人O森氏、素晴らしい機会を有難うございました!(K野さん、感謝申し上げます)ダイジェストなので我々のシーンが放送されるかは未定ですが、授賞式の放送日は11月2日(日)21:00~21:59 放送はもちろんNHK(教育テレビ)です。
ちなみに王子、私共にメイクのお姉様方にハイビジョン用のファンデーションを塗って戴いています。
だから、という訳ではありませんが、一瞬でも映るといいなあ。。。
じゃ、今から長野に行って参ります!!