秋の欧州滞在日記その2
創業1905年というベルリンの誇る老舗百貨店KDWにいる私。(日本だったら三越か高島屋、はたまた松坂屋かというところ)
待ち合わせたのはパリから来た友人、ヴァイオリニストの<さち>です。
モスクワ留学中にも、その後に彼女の恩師クリモフ先生に付いて移ったザールブリュッケンから、そして定住の地となりつつあるパリからも、よくザルツブルグにお泊まりに来てくれた彼女は桐朋の音楽教室、高校、ディプロマコースでの先輩であり大切な友です。
これからも長~いお付き合いになるでしょう。
12月には久々に一緒に弾けそうで楽しみ!
パリ、ミュンヘン、ザルツ…よく色んな街で買い物に出掛けたものですが、
今回はハウスキーピング・グッズが欲しいとの御所望が。。。
『これはドイツが一番ね!』だそう。
そりゃ、オサレはパリにはかないませんもの!この後、彼女はピアノとのリハに走り、私もある催し物に走ります。
さて、これは↓?
弓です!
弓の制作者ステファン・ミュラー氏、ドイツ名前みたいですが全くのフランス人。
「ステフォ~ン・ミュルァー」と発音なさってください。
彼の作品を愛用しているのは
私だけでなく、マークも、彼の弦楽カルテットのメンバーも、前回のブログ「その1」に出て来たハルトムートやペーターも…仲間の弦楽器奏者はみんな彼の弓にお世話になっているとういう感じです。
私もここ数年は、もともと持っているオールドのフレンチ弓はほとんど使わず、この弓で無伴奏から協奏曲まで弾いております。
ここは<KLANG GESTALT>という名の
年に一度、秋のベルリンで三日間開催される新作弦楽器と弓の展示会場。
ヨーロッパ中から厳選された楽器製作者が今年は20人強集まった展示会で、ステファンもフランス・トゥールーズから駆けつけたのでした。
私は新作チェロにも興味があって来たのですが、気に入ったものは試演室で比較もできます。
<新作>といっても出来上がって数年のものもあれば、本当に数週間の生まれたて作品までありました。
面白かったのは初日の、展示作品から選出された楽器を使っての室内楽コンサート。
マークをはじめとする弦楽器奏者3人が、あらかじめ気にいったヴァイオリン、ヴィオラ、チェロをそれぞれ4台づつ選び、当日は曲毎に楽器を取り替えて演奏しました。
でも…普通のコンサート形式なので、ちょっと聴いただけじゃ、あまり差はわからないものです。
奏者の腕がある程度になると、大ホールでなければヴォリュームやヴィブラートである程度コントロールできて安定して聞こえてしまうし…
これがオールドと現代楽器の比較なら顕著に違いがでるでしょう。
このコンサート自体が「比較」がテーマではありませんし。
そして三日間に渡ってのイベントはーklang probeー響きの試し会!
このように楽器が何十丁とあり、マークはヴァイオリン部門を公開試演しました。
前の日のチェロ部門はペーターが試演しましたが、奏者は楽器の個性が引き出され易いように同じ曲を同じ風に(!)楽器の数だけ、弾かねばなりません。
弾くほうは実に神経を使う作業なので
こりゃ難しい。私には出来ないかも…
制作者の名前は伏せて演奏、観客は自分の紙に思ったことをメモしていきます。
最後に「何番と何番をもう一度弾いて下さい」とリクエストがあったり。
でも、これも点数を競う物ではありません。
聞き酒のような感じ?
自分の耳は機械ではありませんし、大変主観的な判断になります。
直感的なものに頼るしかない、とお恥ずかしながらワインの味に照らし合わせたりしてメモをとってみました。(まあ、誰に見せる訳でもないし!)
マークも集中してしています。
この日はなんと18人の制作者のヴァイオリンと6人の弓を弾き比べました。
で、嬉しかったのは弓部門でステファンの評価が大変高かったこと!
実は私もこの目隠し試演ではNo.5だけ二重丸◎がついています。
楽器はマークので、弓だけ取り替えるのを一巡×3種
(1回目はロマンティックな曲でソステヌートを、2回目はモーツァルトの協奏曲からデタッシェと軽めのスピッカート部分を、リクエストがあった最後はいろいろ取り混ぜて)
結局全ての弓を3回聴き比べることが出来たのですが、
第一印象が「熟」
第二印象が「スムーズでバランスが良い、◎」
最後は「良い!」
でした。
他のは「悪くない(えらそーだなあ!)とか鋭い、早い、荒い、丸め」など…
「晩秋」とか「豊か」もありました。
弓でこんな感じなので18丁の楽器はもっと大変。。。
でも勉強になりました!
そして、このイベントには私へのサプライズで「ドイツの家族」が登場。
M夫ともども仲良くしているドイツ中央の街のファミリーなのです。
普段は6人家族ですが、この日はパパ・ザッセとお嫁さんのマリア・ホセがいらして4人で夕食に出掛けました。
こちらはパパSのベルリンでの定宿ヒルトンのお部屋のテラスから臨む絶景、さすがスイートです。
ウン十年間いつもこのお部屋なのはこの景色のためだそう。石を投げれば当たる距離に大聖堂が!
同じ階にあるラウンジからも↓後ろに見えます。ここベルリンとミラノは彼の青春の街、代々続く御家業を継いでいらしたパパPもとうとう今年は引退なさることに…
この晩はワインを片手に(両手くらいの分量だったけど)色んなお話をしみじみ伺いました。
夕食前には散歩して期間限定でライトアップされている
「ベルリンの秋色」を楽しみました。「ウンターデンリンデン」!
まだまだ色んなことがあった濃~い10日間でしたが、また今度。次回は日本ブログとなります!