コンチェルトの代役〜北陸のカニを訪ねて〜

2014年01月28日 00:08

『なんと、、、、、人生こんなことがあるんだな!』昨日はそんな出来事にあいました。

それはマークの父ラルフ・ゴトーニが指揮するというオーケストラ アンサンブル金沢の第345回定期公演フィルハーモニーシリーズでのこと…

アンサンブル金沢は日本のなかでもユニークな存在である素晴らしい室内オーケストラで、懐かしい友人や先輩方もメンバー!今回はベートーヴェン作曲「ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲」をラルフのピアノ弾きぶりで、しかもあとのソリストとしてマークと、ドイツの名教師としても名高いチェリストのウォルフガング・メールホルン氏が出演するというので、私はコンサートを応援しがてら「北陸のカニを食べに行こう!』と以前から予定を空けて楽しみにしていたのです。
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<すっかりツーリスト気分ではしゃいでいた初日>
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<大好きな蟹味噌>
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<ラルフもマークも大絶賛!カニのお刺身>

それが…
なんと本番の前日である一昨日、ホテルの朝食の席で顔色の悪いウォルフガング先生に「もし僕が不調のままだったら、キミ代わりに弾いてくれるかい?』と言われて「えっ?」

横でラルフが『出来るよね?ユーコは弾いたことあるよね?』と。。。
しかし、、、あれは去年の4月の話です。

チェロはもちろん月末のリサイタルのためにここでも練習するつもりでしたが、このベートーヴェンは記憶の奥底に沈んでいます。

それから、いちおう急いで楽譜を見たものの…

先生の体調が悪いなんてそんなことは考えたくないし、代役は万が一もあるまいと思いながら、複雑な思いでリハーサルを聴いていました。
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その夕方、リハーサル後のことです。
急遽『先生の体調が思わしくないので代役を』ということになりました。

「はい!」と言ってからは何がなんだかわからないほどのスピードでものごとが進みました。
コンサートは明日の午後、もう24時間をとうに切っています。

私が心の奥底から愛するこの曲を、こんな形で、こんな状態で、しかも先生の代わりに演奏する、、、
気がついたら、責任が一気に背中にのしかかっていました。

その晩はラルフとマークと3人でリハーサル、私は脳から身体、指、全身で曲を思い出すのに必死。
しかし心配そうな顔のマークの横でラルフは「大丈夫、ああ良かった!さあ御飯に行こう!」と。。。

そうして自分のおかれた状況をかえりみる暇もないまま、翌朝を迎えました。

そしてゲネプロ、、、石川県立音楽堂の響きの素晴らしいこと、このオーケストラがなんと躍動的で生き生きとしていることか!こんな暖かい音楽家たちと一緒に、そして心から信頼するラルフとマークと奏でることができる、その喜びがベートーヴェンの音楽と1つになって心からの感謝が湧いてきました。

正直にいったら、こんな準備不足で、こんなに凄い曲を弾くのに躊躇がない訳がありません。
皆さんの足を引っ張るのが怖くないわけがありません。

でも、曲の素晴らしさと、オーケストラの方々とラルフとマーク、舞台と事務局の方々が皆さんで私を引っぱってくださり、なんとかベートーヴェンの世界にいるまま終えることができました。
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<終わってホッとしているところ:後半のプログラム、ウェーバーは面白く、アンコールのシベリウス「ワルツ・トリステ」には心を揺さぶられました>

ところで最近「兄弟」と間違われるラルフとマークですが、実の親子です!!
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<いつも暖かく細やかに音楽家を支えていらっしゃるアンサンブル金沢の運営&事務局の方々と>
左からお世話になったK政さん、マーク、O海さん、I崎さん、私、ラルフにケニーさん
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<名物チェリストのルドヴィート・カンタさん、桐朋の先輩でいつもキュートな江原千絵ちゃんは第2ヴァイオリンの首席奏者、同じく先輩で変わらぬ笑顔のチェリスト早川寛さんと>

包み込むようなチェロの音のカンタさんは御本人も優しくて本番前に楽屋に励ましにきてくださり
千絵ちゃんの暖かい言葉には張りつめていた心が溶けたし
早川くんの応援のメッセージに勇気をいただいたし…

アンサンブル金沢の皆さんは本当に暖かい!
金沢のお客様も暖かい、これは拍手でよく伝わってきました。
オーケストラ、ラルフ、マークへの拍手に混じって、「ピンチヒッター、お疲れさま」という応援も感じました。

そして弾きわってオケの皆の顔を見たらついうるっときてしまったのでした。
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<アンサンブル金沢のコンサートマスター・松井直さんは姉と同門!昔と変わってなくて本当に懐かしかった☆>

あ、ドレスは代役が決まってから母に泣きついて宅急便で送って貰いました。
夜7時の鎌倉発最終便で翌朝の9時すぎには金沢のホテルに着くという。。。クロネコヤマト恐るべし!!
ドイツじゃあ有り得ません。
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<京都からきてくれたマークの愛弟子・西川 茉利奈ちゃん(絶賛売り出し中の新進ヴァイオリニスト!)私、ラルフ、マークと彼らの大好物である鉄板焼きにて乾杯>
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<精密検査も受けてお元気になられたウォルフガング氏と4人で:本当に良かった!!>
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<そしてまたしてもどこも見られなかった金沢…また来ます!>

しかし…さっき家にかえって、いただいたコンサートの録音を聴いて自分の情けなさに唇を噛み締めて涙したのも事実です。

曲から得るものを余すところなく全て音に出し尽くしたい。
痛みを感じながら、強くそう思いました。

得難い体験をさせていただいて、心から感謝いたしております。
ありがとうございました!
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