日本の美

目黒の喜多流能楽堂で「熊野(ゆや)」を拝見しました。お世話になり、また仲良くして頂いているシテ方・松井彬先生(熊野)とその御子息・俊介さん(朝顔)の初親子共演、それに大鼓の大倉正之助さんも出られたのですが、実はこの御三方とは一昨年にフィンランド公演を御一緒頂いた仲!これにフィンランド人バイオリニストのマーク・ゴトーニを加えた5人組で三都市を廻ったコラボレーション公演は現地にて高く評価され、話題になりました。コダーイの二重奏を舟弁慶にしたてて…楽しかったなあ。
今日の出し物「熊野」はなんとなく知っていた平宗盛とその愛妾の桜の頃のお話…以前読んだ白洲正子さんの御著書「能の物語」だけでない何かが記憶に引っ掛かり、自宅に戻ってその原因を発見!ザルツ留学生時代に読んでいた三島由紀夫の「近代能楽集」だった。早速に読み直すと、やはり美しくも自嘲的な三島の世界の典型で、今日の「熊野」の本質とは関係の無い物。どうりで思い出せなかった筈だわ。                                                        
お能の世界には全く詳しくないけれど、ただ単純にその美しさに見とれ、その心を秘めた所作にはっとする瞬間があります。俊介さんの朝顔は、善い意味で初々しく、一輪の花の様に楚々としていました。松井先生の熊野は熟した華やかさで、『我が娘に一目会いたい』と懇願する母親の手紙を読んでいる姿には、その哀れさに涙しそうになり、宗盛に所望され桜の下で舞った後に突然短冊に歌を記す時には、緊張感に軽い苦しささえ覚えました。あと、私は耳に反応する所が大きいらしく、今日の笛、小鼓、大鼓の囃子方、三人の室内楽的バランスとハーモニー、そして場の持っていき方にも圧倒されました。大倉さんの大鼓はやはり自然で良い音だなあ。ああ面白かった!
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思えば、世阿観の花伝書に最初に夢中になったのは中学の頃、この能の心得を、自分の目指す演奏者の姿に重ねて貪り読んでいました。初めて松井先生にお目にかかったのは、もう何年前だろう。花伝書の話しで盛り上がったなあ。偉い先生なのに素朴な疑問にも付き合って下さるし、明るいし、大好きです!
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Category: Diary コンサート
Published on: Sun,  24 2005 23:46
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